大阪観光日記 「海遊館に行って来たのだ!」の巻
大阪旅行。当然、最近話題のユニバーサルスタジオジャパンに行ってきたかといえば、じつは行っていない。私が大阪に行ったのは夏休み前の平日。ネタの鮮度といい話題性といい、
「大阪行ったらユニバーサルスタジオジャパン!」
みたいな空気の中、あえて私はいかなかった。別に行きたくないわけではない。できれば行きたい。いやぜひ行きたい。ではなぜ行かなかったのか? それはごくあたりまえのこと。ユニーバーサルスタジオジャパンよりも行きたい場所があったからだ。そこの名は、
「海遊館(かいゆうかん)」
水族館である。
この海遊館、普通の水族館とはわけが違う。何が違うかといえば、でかいのだ。世界最大級の水族館であることは間違いない。そしてこの水族館に奴はいる。それは「ジンベイザメ」。そしてこのジンベイザメが「世界最大の魚」というすごい肩書きを持っているのである。
「世界最大の魚ってクジラじゃないの?」
なんて思う人も中にはいるかもしれないが、クジラは哺乳類なので魚ではない。じゃあ世界最大の魚というのは何かといえば、それが「ジンベイザメ」なのである。
ジンベイザメは大きなものになると体長16〜20メートルくらいになる。性格は非常におとなしく、餌は海を漂うプランクトン。あんな小さなものを食って、どうやったら世界最大になれるのか。まったくもって不思議である。さて、このジンベイザメを私はどうしてもこの目でみてみたかった。それはなぜか? 私とジンベエザメの出会いは小学生にまでさかのぼる。
当時の私は、何かの資料でジンベイザメを目にした。おそらく図鑑か何かだったと思う。
「何々? 世界最大の魚? 体長約16メートル!? でかい。学校のプールの半分はうまっちゃうよ。」
学校のプールは25メートルである。16メートルなら半分以上はうまってしまう勘定だ。
“すごい、そんな大きな魚がいるなんて、・・・・みてみたい!”
私はそれからというものプールで泳ぐ度にジンベエザメの巨体を想像していた。プールの底に引かれた5メートル間隔のラインを目安に、
「でかいなー、こんな生き物が実際にいるんだよなー。」
と何度も確認した。
そして月日は流れ、とある日のこと。私は大阪で海遊館という水族館が出来たという話しを耳にした。私は狂喜乱舞した。なぜなら、この海遊館の目玉はジンベイザメと言うじゃないか。
“ジンベイザメが見れる。もうこれは行くっきゃない。ジンベイザメに会わなきゃならん!”
その時私は心にそう強く誓ったのである。
大阪旅行二日目の夕方、私と奥さんは親戚のおばちゃんの運転する車にゆられ、一路海遊館を目指した。
“やっとこの日がやってきたか。何年ごしかな?”
私は一人感慨にふけっていた。窓のそとは工場地帯らしくたくさんの工場が並んでいる。カーナビを海遊館にセットしてあとは言われるままに進むだけだ。水曜日の夕方だけあって道はすこぶる快適。出発地点である親戚の家から高速を通り、30分ほどすると目の前に海遊館が見えてきた。
 ←海遊館
海遊館に到着。おぉ、想像以上に建物が大きいな。
「おおきーでしょ。8階建てなのよ。大きなエスカレーターで上に行ってぐるぐる歩きながらみてまわるの。」
おばちゃんが得意げに話す。ほー、なるほどねー。
私達は入り口でチケットを購入。どうやら入り口は建物の3階にあたるようだ。料金は大人1人2000円。うーん、立派なお値段。ステーキがいただけますな。ま、これもジンベエのため、がまんがまん。といっても、料金はおばちゃんもち。お世話になります。
私達は係りのおねーさんにチケットを切ってもらうと、いよいよ海遊館の中へと進んでいった。
「わぁー!」
奥さんがおもわず声をあげる。みるとそこにはトンネル状の水槽があり、トンネルを通って奥へ進むようになっているようだ。
 「あんまりじっと壁を見ちゃダメよ。船に乗ってるみたいに酔っちゃうからね。」
おばちゃんが注意してくれた。確かに、このトンネルの壁をじっとみていると船にのっているような感覚に襲われて気持ちがわるい。
“あれっ?”
短い・・・。なんじゃこのトンネル5メートルくらいしかないじゃん。キレイなのはキレイなんだけどもうちょっと長さが欲しいな。
水のトンネルを抜けると大きなエスカレーターが現れた。どうやらこれにのって一番うえに上るようだ。えっと今は3階だから8階までで5フロアぶん一気に上るのか。すごいねこりゃ。

ここ海遊館は「環太平洋生命帯」とよばれる地域を表現することを目指している。環太平洋という言葉からわかるように、それは太平洋をぐるっとまわっている地域だ。海遊館では建物をらせん状にまわりながら降りる事によって、ちょうど太平洋をぐるっと一回りするつくりになっている。
エスカレーターをのぼりきり、まず最初に現れたのは、
「あっ! カワウソ!」
みれば日本の森と銘打たれた区画でカワウソたちが、じゃばじゃば泳ぎまわっているではないか。
“こいつぁー、特別天然記念物だよ。ありがたや、ありがたや”
私はおもわぬカワウソの歓迎にすっかり驚き、心の中でとっさに両手をあわせていた。魚しかいないと思っていたのにいきなりカワウソとは、先制のジャブどころか私にとっちゃあストレートだ。開始早々にグロッキーである。
カワウソたちはこちらをちろちろ見ては、だぼんと音をたてて水にとびこむ。
“さんきゅうカワウソ、出迎えご苦労。”
だれも歓迎していない。しかし、なんてかわいらしい。これならペットにしたいな。でもカワウソを捕まえた瞬間こっちが捕まってしまうだろう。
「うにもつれてきたかったなー。」
私は思わずつぶやいた。「うに」と言うのは私の愛犬である。今回の大阪旅行では東京のペットホテルでお留守番中なのだ。ここにつれてくればさぞ喜んだに違いない。普段はお家で一人ぼっち、ご主人様はいても友達がいないのだ。

↑こちらは愛犬「うに」。
今回の大阪旅行では東京のペットホテルでお留守番である。
カワウソの次に私たちを歓迎してくれたのはラッコだった。
“すごいな・・・”

何がすごいってこのラッコ、じっとしてない。あほみたいに、くるくるくるくる回転しているのだ。まったく止まる気配がない。気でも狂ったかのように永遠と回っているのだ。私は心配になり声をかけてみた。
「おーい]
その瞬間、目の前で回転するラッコがぴたっと動きを止めた。しかし、私の顔をちらっと確認するかのように見詰めるとまたすぐに、ぐるぐるぐるぐ・・・・。
“あほだ・・・。”
あほだ、あほにちがいない。このラッコいつまでまわってるんだ。私はあっけにとられその姿を呆然とみつめていた。
「かわいいー!」
ん? 少し先で奥さんの声がする。どうやらラッコごときには目もくれず、すぐ先のゴマアザラシを見ているらしい。
私はもう一度ラッコに目を向け、まだぐるぐる回転しているのを確認すると、
「目、まわすなよ。」
と、一言声をかけ、ゴマアザラシの方へと足を向けた。
“おぉー、ごまちゃん。”
硝子の向こうではゴマアザラシたちが気持ちよさそうに水の中を泳いでいる。岩場では昼寝をしているやからもいる。
“たしかにこれは、かなりかわいい。さわってみたい”
そんなことを思いながら見ていると一匹だけ背泳ぎをしているやつがいた。
かなりエレガントな性格らしい。他のゴマアザラシたちはせっせこ泳いでいるのに、こいつ一匹だけ、
「すいーっ」
と、優雅に背泳ぎをしている。まるで悟りを開いたような雰囲気だ。
「きゃーきゃー♪」
奥さんは隣であいかわらずはしゃいでいる。
「みてみて、ほらほら。」
みてみるといっぴきのゴマアザラシが奥さんの目の前でふわふわ浮いている。水中からこちらをじーっと見ているのだ。私も側に行ってみたが確実にこちらをみている。正面から覗き込むと大きなひとみで私の目をはっきりと見つめ返してくる。
「ねえねえ、こっちみてるよね?」
奥さんが嬉しそうに言う。
「たしかにこいつはこっちみてるね。目線が合うもん。」
私はためしに目線を合わせたまま左右に頭を揺らしてみた。するとどうだろうゴマアザラシも一緒に頭を左右に揺らすじゃないか。毎日見学人が大勢やってくるだろうに、そんなにも平岩夫婦が珍しいのか?
「ほら。」
奥さんが急に水槽の硝子に片手を差し出した、するとゴマアザラシはその手に顔を近づける。
「わぁー、私の手舐めようとしてるよ。」
“うーん、それはどうだろう。”
私がそんなことを思っていると、奥さんは次に顔を水槽に近づけた。
「きゃっ!」
奥さんが驚いたのも無理はない。顔を近づけたとたん、ゴマアザラシの顔面がばーんと、ものすごい速さで近づいてきたのだ。
「ガラスごしにチューされちゃった♪」
奥さんはかなり御満悦である。しかし、私の目にはゴマアザラシが奥さんの鼻先に噛み付こうとしているふうにしか見えなかった。
「ねぇねぇー、ごまアザラシ欲しい〜。うちで飼えるかな?」
どうやら相当気にいったらしい。
“無理に決まっておろう・・・”
と思いながらも、自分もさりげなく欲しかったりする。なんといってもあの大きな目がかわいい。吸い込まれそうになるからな。おっと、こんなとこにいつまでもいてられない。先に進まねば。ジンベエザメまでまだ遠いのだ。
「ほらほら、行くよ。」
私は、水槽にべったりくっつく奥さんを引き剥がした。さて次の水槽に向かうとしよう。
前述したようにこの海遊館は太平洋を表現している。
・ラッコ=アリューシャン列島
・ゴマアザラシ=モンタレー湾
である。で、次にくるのがパナマ湾。ここは熱帯雨林の森に住むナマケモノ、岩礁などに生息する熱帯魚などを見ることができる。そして次にくるエクアドル熱帯雨林ではご存知アマゾンに住む淡水魚などを見ることができるのだ。そしてここにいるのが、
「世界最大の淡水魚、ピラルク」
である。このピラルク、私はすでに読売ランドにある水族館で謁見済である。久しぶりに見るなあと思いながら見ると、やっぱり、
「でかい!」
大きなもので体長2メートル以上になるというからな。どんなにお願いされてもアマゾン川だけには飛び込みたくない。ピラニアだっているしね。ヒルだってきっとうじゃうじゃいるにちがいない。しかもアマゾンならヒルもでかそうだ。そんなんに血を吸われたらあっちゅーまに死にそう。あぁ、やっぱ怖いねアマゾンは。ここは川口浩探検隊にまかせておくのが一番ですな。しかし、海遊館のピラルクはそんなにでかいという印象を受けない。すでに一度見ているからか? 読売ランドのピラルクのほうがでかいかな。そういえば読売ランドにはマナティもいたな。あれはよかった、優雅に泳いで、でっかくて。象の仲間だったなたしか。背中に、ばふっとしがみついて一緒に泳いで見たかった。こうやって考えると読売ランドもあなどりがたし。
“こいつもなかなかあなどれん・・・”
私はペンギンを見つめていた。ここは南極大陸のコーナーである。
“すごい、さっきからまったく動かん。ぴくりともしない。なんて集中力だ。”
そうなのだ、このペンギンさっきからまったく動かない。すくっと立ってまさに直立不動、これでは前川清もかなうまい。ちかよってくすぐったりしてみたいな。ほかのペンギンはよちよちしたり腹で滑ったりしてるのに、何が彼(彼女?)をこうさせるのか。もしかしてぬいぐるみか? んなわきゃない。
「ばしゃん!」
「おぉ!」
他のペンギン達は勢いよく水に飛び込んでいた、地上ではよちよち歩きだが水中ではまったくちがう。びゅんびゅん水中を進んで行く。泳ぐと言うよりは飛ぶといったほうが近い。さすがペンギン。泳ぎに特化した鳥である。
“うーん、すごいなー。これで鳥なんだもんな。ニワトリじゃこうはいかんよな。”
あたりまえである。間抜けなコメントを残し、順路を進むことにした。
“なんだありゃ?”
私の目に映ったのは高速でびゅーんと泳ぐ物体。白くてでかい。いったいなんだろう? 説明書きに目をやる。なになに、タスマン海のカマイルカ。なるほど、イルカか。さすがだな。明るい性格だけあって、動きも活発でスピーディだ。撮影しようと思ったがあまりにも速くてまともな画像がとれなかった、無念。しばらく目を回しながらイルカを見つめる。
“速いねぇ。これだけ私も泳げたらオリンピック出られるのに。”
そんなに速かったら気持ち悪いぞ。
“すごいすごい、ずっと泳いでるよ。いったいいつまで潜ってられんだろう。”
あれ? ふと思ったが鯨やイルカは哺乳類。当然ずっと水中にいるわけではなく、息つぎのために海面まで上昇しなければならない。マッコウクジラなどは潜水時間1時間以上、潜水深度も1000メートルを突破する。すごい、たしかにすごい。でもまてよ、
「どうやって、睡眠をとるんだろう?」
謎だ。どうやって寝るんだ? 地上に上がってごろ寝するわけではなかろう。そんなことしていれば日本の捕鯨船のいいカモである。ということは海の中で眠るのか? でもそうすると眠っている間に窒息死してしまうではないか。一晩でクジラもイルカもあの世いきである。うーん、不思議だ。空気穴だけ水面から出してぷかぷか浮きながら寝るのか。しかしそれじゃあ、あまりにも無防備だ。なら苦しくなるたびに浮き上がって息継ぎしてるのか。でもそんなことしてたら気になって熟睡できないだろう。しかも、眠ってる間に油断して深海に沈んでしまったら気がついたときにはいっかんのお終わりではないか。わからん、気になってしょうがない。くそう、いくら考えてもらちがあかん。今度調べることにしよう。
私は、もやもやしたまま次のコーナーへ向かうことにした。
そこには珊瑚礁が広がっていた。色鮮やかな魚達と珊瑚礁。うーん、きれいだねぇ。オーストラリアのグレートバリアリーフの再現。
“本物はこれが2000キロも続くのか”
実際のグレートバリアリーフは2000キロというスケールで展開されているという。見たこともない私には全然想像できない。まさしくグレートだ。一度行ってみたい。たしか、うちの奥さんは行ったことがあると言っていた。昔、コアラかウォンバッドを抱っこしている写真を見せてもらったことがある。
“くぅ、絶対私も行ってやる。”
と、珊瑚礁を見ながら心に決めたが、その時は奥さんもセット。きっと行ったことのない他の国に進路変更させられるに違いない。
“まあいいか。コアラ抱っこできないし。”
オーストラリアではコアラの抱っこ禁止令がずいぶん前から発せられている。コアラにストレスが溜まって大変なんだと。やっぱりコアラはユーカリ食って遊んでるのが一番。日本人の腕にしがみつくよりはユーカリにしがみついてるほうが心も落ち着くのであろう。うーん、でも抱っこしてみたい。ま、今となってはかなわぬ夢か。現地の人で抱っこさせてくれる人がいるかもしれんが、それもちと心苦しいものがあるな。我慢我慢、というより行きそうにもないし。捕らぬ狸の皮算用、無駄な悩みはやめておこう。私はお家に帰ってうにを抱っこしてるくらいが丁度いいや。
「さて次に行くか。」
おもむろに足を進める。その時私の目に飛び込んできたものは、
「おぉー! すげぇーーー!」
深さ9メートル、水量5400トン。
『うわー!』
奥さんと二人して驚きの声をあげる。水槽のなかには多種多様な魚が泳いでいる。この水槽が太平洋、この海遊館の中心に据えられた超巨大水槽である。

↑ほんとうにでかい水槽。うーん、飛び込んで遊んでみたい。
私はしばらく呆然と水槽を眺めていた。そしてその中に、いろいろな魚にまじって、よりいっそう優雅に雄大に今までみてきた魚達とは比べ物にならないスケールで回遊する、
「おぉーーーーー!、ジンベエザメぇーーーー!!。」

↑ひらくんとジンベエ

↑奥さんとジンベエ。 うーん、こっちのほうが絵になりますな。
もう最高だ、テンションもあがってふわふわ体が浮きそうである。すげえぜ、でかいぜジンベエザメ。世界一の巨大魚、かっくいい! しがみついて一緒に泳ぎたい。コバンザメになりたいと心から思う。その愛らしい目とでかい口。たまらんぞ。
“よっ、この日本一!”
などというわけのわからん掛け声を心で叫んでしまうほど、私は浮かれていた。

↑ジンベエザメのアップ。でかいですねー!

↑遠景。他の魚と大きさが全然ちがいます。
私はずーっと眺めていた。いつまでもいつまでも眺めていた。たぶん20分や30分は平気で眺めていたんではなかろうか? おばちゃんは半ばあきれた顔で、奥さんは嬉しそうにそんな私を見ていた。
ついに念願叶ったこの瞬間。たぶんずーっとこの日のことは忘れないだろう。ジンベエザメを見て、
「あっ、そう」
と、かるく受け流す人もいるだろう。
「へぇーすごいね。」
なんて言って、ちょっと関心する人もいるだろう。たしかにそういう人にとってはたかが魚にはちがいない。でも私にとって本当に昔から、心の中で思い描いて憧れていた魚なのだ。それが今、目の前で本当に生きていて本当に泳いでいる。ゆっくりゆっくり泳いでいる。すごい威圧感でせまってくる。大きな顔、大きな腹。これがジンベエザメ。すごい、すごい。もうその言葉しか出てこない。出会えてよかった。心からそう思った時間だった。
さて、ジンベエザメは大きい。ところがこの目の前のジンベエザメまだ子供なのだ。順調に育ってくれればもっともっと大きくなる。そしたら、またここに来ようと思う。もっと大きくなったジンベエザメをまた見にくるのだ。その時はきっと、ひらくん一家も人数が増えていることだろう。
「ほらほら、行くよ。まだまだ見る所いっぱいあるんだから。」
おばちゃんの声。
「それに、進んでもずっと見てられるから。」
そうなのだ、この太平洋を表す超巨大水槽、一度視界に入るエリアまでくれば常時目にすることができるようになっている。説明で深さ9メートルと書いたがこの深さ9メートルの水槽の一番上から螺旋構造が始まり、いよいよ下へ下へとくだって行くことになる。私は中心の水槽で泳ぐジンベエザメをちらちら見ながら進むことにした。
次に向かったのは瀬戸内海。ここにはイセエビ・真鯛・ひらめにマダコと非常においしそうな魚達がいる。海鮮大好きな奥さんはよりいっそう目を輝かせ、
「おばちゃん、夕飯はここのレストラン?」
おばちゃんはあっけにとれている。
「う、うん、それでもいいけど?」
「海遊定食とかいって、ここの魚出てこない?」
「えっ?!」
「ほらほら“さっきまで水槽で泳いでいた新鮮な魚です”とか言って?」
「ないない、そんなんあったら子供泣くで。」
まったくそのとおりだ。
「そっか、無いか。残念。」
と、奥さんは渋い顔。たしかにあったら美味いだろうけどな。さて、そのまま少し進むと、
「あぁーこれもおいしそう!」
チリの岩礁地帯、そこにはイワシの大群。うーん、たしかに美味そう、さらにすごい。何がすごいってみんな大口を開けて泳いでいる。何かそんなに驚くことがあったのか? あごの骨でも外れているにちがいない。まぬけというよりすこし不気味である。いまにもイワシ達の、
「あーーー。」
という大合唱が聞こえてきそうだ。そんな気持ち悪いイワシ達を後にして進むと、次はクック海峡というエリア。
“あっ、ウミガメ”
何気に私はウミガメを初めて見た気がする。やっぱり大きいな。よくテレビなんかで泳ぐのを見るけど結構動きはすばやい。
“ん? なんだあいつ。ガラスに映っている自分をずっと見てんのかな?”
見るとそこには水槽の底でじっとガラスを見つめるウミガメが一匹。おそらくガラスに映った自分の姿を見ているのだろうが、こいつナルシストか? 他のカメたちは餌の海草をパクパク食べているのに、こいつ一人だけ自分の姿をじっとみている。私はそのカメの側まで行ってデジカメで、ぱちっ。うーん、やっぱり動かない。剥製のようだ。
「こんこん。」
私は水槽を小突いてみた。まったく反応がない。変な亀だ、もっと客にサービスして欲しいな。といっても、こんな中に閉じ込められてるんでは気がめいるか。
“あれ? もしかしてすねてんのかな。それともいじめられっこか?” ただの亀である。そんな複雑な人間関係もとい亀関係もなかろう。
「かーめ、かめ」
と意味不明な声を亀にむかってかけていたら、おばちゃんも奥さんもはるか先までいっている。おっとっと、まってくれよ。私はすぐに二人を追いかけた。
「次はなんだろね・・・ん? 何にもいないじゃん?」
ウミガメの隣の水槽を覗いてみた。しかし何もいない。
“おかしい。からっぽのはずはないんだけどな。あっ、いた!”
そこにはいた。ふわふわというかなんというか。じっと体を水に任せいる魚。
「マンボウ」
である。
「へぇー、これがマンボウかー」
この不思議な浮遊感でただようマンボウ。こいつも大きなものになると体長2〜3メートルくらいになるという。床にぺたっと置いたら、ちょうど2畳ぶんくらいの大きさかな。クラゲを食べるらしいが美味いのかね。ゼリーみたいかな。昔キクラゲってどんなクラゲだろう? なんてことを思っていたら、本当はきのこだと知ったときはショックだったな。マンボウは本物のクラゲを食べるんだろうけど、刺されたりしないのかな。自分でも泳げるみたいだけど基本的には水のむくまま気の向くまま。海のナマケモノといったところか。ええ暮らししてまんの。しかし目立たないね。いるかいないのか、はっきりわからん。そのせいなのか、ほとんどのお客さんが無視して進んでいく。というより存在に気が付いてないんだろうな。かわいそうに。ま、でもそれもマンボウにとってはどうでもいいことか。
「それじゃな、達者で暮らせよ。」
私はそうつぶやくとその場を後にした。
いよいよ海遊館も終わりに近づいてきた次は日本海溝のコーナーである。ここには海溝の斜面部200〜400メートルに住むという世界最大のカニ、タカアシガニがいる。
「なにこれー?」
奥さんが奇妙なものでも見るような声をあげる。
“どれどれ、おぉ、これはなんだか気持ち悪いような不思議なような。”
複雑な光景である。深海というのは光が届かないので暗い。ということでここの水槽も比較的薄暗くしてあるのだが、一つの光がスポットライトのように水槽内を照らしている。その光に照らし出されたタカアシガニ・・・不気味だ。
はっきりいって、エイリアン以外の何者でもない。地球外生物という雰囲気をかもしだしている。このまま光につつまれてどこかに旅立っていきそうな勢いだ。普段こんなカニを、
「美味い美味い。」
といいながら食べているかと思うと複雑な気持ちである。
「なんだか怖いねー。」
奥さんと二人でそうつぶやいた。こんな集団に海底で出会ったら捕まえようと思う前にマッハで逃げるであろう。逆にこっちが襲われて食べられそうだ。この水槽の中のカニたちはおとなしくしているようだが、実際はどのくらいのスピードで動くものなのだろうか? 私が田舎の川でみたカニはかなりのスピードで水中を移動していた。あれと同じスピードならいっそう気持ちが悪い。
「おえ、いこいこ。」
私はさっさと先に行くことにした。するとおばちゃんが、
「さ、もう次のところで最後だからね。ジンベエザメともここでお別れだよ。」
後ろを振り返る。すでにもうここは巨大水槽の一番下だ。見上げるとジンベエザメの巨体がゆっくりと水槽の上のほうで遊泳しているのが見える。
“ここでお別れか・・・”
私はまたしばらくジンベエザメを見ていた。実は今の海遊館にいるジンベエザメは二代目ジンベエザメなのだそうだ。初代ジンベエザメは死んでしまったらしい。やはりジンベエザメの飼育というのは難しいのだろうか? ということはこのジンベエザメもまた今度出会えるという保証は無いわけだ。
“もっと見ていたい、けどいいかげん時間もない。行かなきゃだよな。また会いにくるからな。その時まで元気でいてくれよ。”
私はそう願いながらついにジンベエザメの泳ぐ水槽を後にした。
さて、最後に残ったのは「クラゲ館」というクラゲだらけのコーナー。あの水槽でだらだらすごしているマンボウをここにつれてきたら大喜びするに違いない。あやつにとってはまさに夢のような場所である。しかしクラゲというのは海で出会うと気持ちが悪いが、こうやって水槽に入れて鑑賞するとおつなもんですな。
ふむふむこれなら世の中にクラゲマニアがいるのもうなずけるな。なかなか幻想的でよろしい。世話も楽そうだし。そういえばクラゲロボットなんてのもあったな。水にいれてぷかぷかしていたのを池袋の東急ハンズで目撃した覚えがある。あれもなかなかよかったがやっぱり生のクラゲのほうが断然いい。うちも2〜3匹飼ってみるかな。実家の友達に捕まえて送ってくれと頼んでみるかね。あー、でも水槽にうつしたりするのが嫌だな。取り扱うにはすこし気持ち悪いや。ぶよぶよしてるし。子供の頃は海岸に転がっているクラゲを投げて遊んでいたけど、あんなことはもう気持ち悪くてできないな。
こうして最後にクラゲに癒されて今回の海遊館ツアーは終了した。いやー、楽しかった。平日にきて人が少ないというのもよかった。ゆっくりまわれたからね。きっと土日なんかにゃ人がわんさか訪れるんだろうな。でもユニバーサルスタジオジャパンの影響でお客さんが減ってると言ってたからゆっくり見れるかも。小さなお子さんなんかは連れてきたら喜ぶだろうな。子供が産まれたらつれてこよっと。とりあえず目玉のジンンベエザメは一生に一度は見ておきたい。まあこれは私の言い分だが。こんなのが海で泳いでると思ったら・・・怖くて泳げませんな。私はアウトドアが嫌いです。
本当に楽しかった。もっとじっくりまわってみたかったな、夕方から入館したのであまり時間がなかったのだ。朝から行ってじっくりまわれば私なら一日中だっていられると思う。普通の人でも半日以上は楽しめるだろう。うちの奥さんは今回の海遊館でゴマアザラシに一目ぼれしてしまったらしく、しばらくずっとゴマアザラシが欲しい欲しいと言いつづけていた。今でもやっぱりその夢は捨てていないらしい。私はもうなんども書いたがなんと言ってもジンベエザメこれにつきる。絶対もう一回来て、さらに大きくなったジンベエザメを見ようと思う。そのときは子供も連れてきたいな。きっとよろこんでくれるだろう。
海遊館、海の生物だけにとどまらず、意外と他の動物も多い。やっぱり入場料2000円だけのことはありました。大阪のおばちゃんと海遊館に感謝して、今回の大阪海遊館紀行、おひらきとさせていただきます。
本編で紹介しなかったその他の生物達

↑一瞬どこにいるのかわからないワニ

↑うつぼです。食われそうで怖い

↑巨大水槽にいたマンタ
※ほかにもまだまだたくさんの生き物達がいました。うーん、紹介しきれない。
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